13.消費税における仕入控除税額の控除時期と計算方法
前章「12.消費税における仕入控除税額の計算方法の決め方」にて、さまざまな税額控除の方式があることがおわかりいただけたと思います。
本章では、これらの仕入税額について、いつ控除するのか、また、仕入税額を全額控除する方式について、控除できる仕入税額をどのように計算するのかについて説明したいと思います。
※個別対応方式、一括比例配分方式、簡易課税の場合の控除する仕入税額の計算方法については、それぞれ以下の記事をご確認ください。
15.消費税における個別対応方式の計算方法
16.消費税における一括比例配分方式の計算方法
17.消費税の簡易課税の仕組みとみなし仕入率
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目次
仕入税額控除の控除時期
結論から申し上げますと、仕入税額を控除するのは「課税仕入を行ったとき」です。
法人税では、期間損益計算の関係から、収益と対応する時期に費用を計上しますが、消費税法ではこうした考え方を取りません。
したがって、商品を仕入れ、仮にその商品が売れ残っていたとしても、仕入税額は控除されます。
また、消費税法上は設備などを購入したことも仕入と呼ぶのでした。
【参考】
11.消費税計算で仕入税額控除のできる取引・できない取引
したがって、設備を購入した場合には、その引き渡しを受けた時に仕入税額を控除します。代金を支払っているかどうかは関係ありませんので、未払いであっても仕入税額を控除します。
つまり、設備を割賦で買ったとしても、引き渡しを受けているのであれば、設備代金全額にかかる仕入税額を控除することになります。
一方、サービスの提供を受ける場合、前払金を支払う場合があると思います。その場合、サービス提供が完了していないのであれば、仮に代金を支払っていたとしても、税額控除することはできません。
繰延資産や短期前払費用にかかる仕入税額控除の時期
創立費や開業費などの繰延資産についても同様に考えます。
すなわち、繰延資産にかかる仕入税額については、支出をした時に仕入税額を控除するのであって、それらを償却したときではありません。
一方、法人税や所得税における短期前払費用の取扱い、すなわちまだ役務提供を受けていなくとも、支払の日から1年以内に役務提供を受けるものについて、支払ったときの損金に算入することを認める取扱いを受けているものについては、支出したときに仕入税額控除を行います。
建設仮勘定の仕入税額控除の時期
建設工事では工事を発注し、完成引渡しまで長期を要します。そのため、工事における設計料、資材費などの費用は一旦「建設仮勘定」に計上し、工事が完成し引渡しを受けた時に、建物などの該当する固定資産勘定に振り替えます。
しかし上記で述べたように、消費税法上は設計料や資材費については、役務提供や購入を行った時に税額控除を行います。
また、工事代金のうち部分的に引渡しを受けた金額(これも建設仮勘定に計上されていると思います)についても、その都度、仕入税額控除を行います。
ただし、建設仮勘定として経理した課税仕入について、その目的物の完成した時の課税仕入としている場合には、その処理も認められます。
この取扱は未成工事支出金についても同様です。
所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃貸借処理した場合
所有権移転外リース取引については、リース資産の譲渡として取り扱われるので、賃借人が賃貸借処理をしている場合においては、当該リース資産の引渡しを受けた日の属する課税期間において一括控除することになります。
ただし、所有権移転外ファイナンス・リース取引について、賃借人が賃貸借処理をしている場合には、会計基準に基づいた経理処理を踏まえ、経理実務の簡便性という観点から、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入とする処理(分割控除)が認められています。
【参考】
国税庁:所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃借人が賃貸借処理した場合の取扱い
仕入税額を全額控除する方式における仕入控除税額の計算方法
課税期間中の課税売上高が5億円以下、かつ、課税売上割合が95%以上の事業者は、仕入税額につき全額を控除できます。
つまり、その場合には仕入の際に支払った消費税の税額を、課税標準税額に対する消費税額から控除することになります。
具体的には、以下の1,および2.を合計した額を控除することができます。
1. 課税仕入の合計額(税込)に108分の6.3を掛けた金額
2. 外国貨物の引取にかかる消費税額
なお、個別対応方式、一括比例配分方式、簡易課税の場合の控除する仕入税額の計算方法については、それぞれ以下の記事をご確認ください。
15.消費税における個別対応方式の計算方法
16.消費税における一括比例配分方式の計算方法
17.消費税の簡易課税の仕組みとみなし仕入率
知っておきたい基礎知識|消費税|まとめINDEX
- ~はじめに~ 知っておきたい基礎知識:消費税
- 01.消費税の仕組み
- 02.消費税の課税対象となる取引・対象とならない取引
- 03.消費税の申告・納税が課される事業者と、免税される事業者とは?
- 04.消費税の納付額の計算方法と課税形式
- 05.消費税の納付額の計算方法 〜簡易課税の計算〜
- 06.消費税の対象となる取引と「非課税取引」「不課税取引」の違い
- 07.消費税の非課税取引の仕組み
- 08.消費税における輸出免税取引の仕組み
- 09.消費税における会計処理(税込経理方式、税抜経理方式)の違い
- 10.消費税における課税売上割合と課税売上割合に準ずる割合
- 11.消費税計算で仕入税額控除のできる取引・できない取引
- 12.消費税における仕入控除税額の計算方法の決め方
- 13.消費税における仕入控除税額の控除時期と計算方法
- 14.消費税計算での対価の返還と貸倒れの場合の処理
- 15.消費税における個別対応方式の計算方法
- 16.消費税における一括比例配分方式の計算方法
- 17.消費税の簡易課税の仕組みとみなし仕入率
- 18.消費税における各種届出書と提出期限
- 19.消費税の確定申告期間と納付の期限
- 20.消費税の軽減税率制度の仕組みと税額計算の特例
- 21.消費税におけるインボイス制度(適格請求書保存方式)の仕組みと必要な記載事項