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「所得控除」を活用して節税する方法

監修者 : 宮原 裕一(税理士)

経費は売上から引くものですが、経費を引いた所得からさらに引くことができ、課税もされないのが「所得控除」です。所得税には15種類ありますが、ここでは特に対象者の多い「医療費」と保険関連、そして扶養関連の控除について解説します。

全15種類の所得控除について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
所得控除の種類と申告できる人まとめ【2022年確定申告】

「医療費控除」は自分や家族が支払った医療費などを申告

医療費控除は、年末調整では受けられないので、所得税の確定申告が必要です。

1年間に自分や配偶者、子どもが支払った通院費や薬代などをまとめて、「医療費控除」として申告できます。ただし、たとえばケガで入院したときに加入している保険会社から保険金などを受け取ったら、その金額を医療費から差し引きます。

こうしてまとめた医療費の合計が10万円を超えていることが申告の目安です。ちなみに、控除額は最高200万円までです。

また、医療費控除の申告時には、支払った際の領収書を基礎として明細書の作成が必要となります。

医療費として認められるもの

実際に医療費をまとめるにあたって、どこまでが医療費として認められるかが気になるところです。基本的には病気やケガの治療のためではない支出は、控除の対象ではないと覚えておきましょう。

たとえば、予防接種や美顔整形、一般的なメガネの購入費などは対象外になります。

薬局で買った(風邪を治すための)薬代は、治療のためのものなので、医療費控除の対象です。疲労回復のためのドリンク剤やサプリメントは対象外になります。

治療のための通院にかかった交通費も医療費控除の対象になります。子どもの医療費が無料でも病院に行くまでの公共交通機関の交通費は医療費控除の対象なので、しっかり記録しておきましょう。

医療費控除が受けられる主な例

診療費・治療費 ※健康診断・人間ドッグなど予防を目的とするものは対象外

◎ 治療のための歯の矯正費用

◎ 金歯・インプラント治療費 ※美容目的のものは対象外

◎ 治療のためのマッサージ・柔道整復の施術料 ※国家資格を持った人に受けた場合のみ

◎ 治療のための医薬品の購入費 ※健康増進・疲労回復のための医薬品は対象外

◎ 通院のための交通費

◎ 治療のためのメガネの購入費(処方せんが必要)

◎ 医師の指示による 血圧計の購入代

◎ 出産の分娩費用など ※出産育児一時金の受け取りは差し引く

◎ 介護保険制度下での施設・居宅サービス ※領収書に医療費控除の対象額が記載されている

医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)

医療費控除の特例として、2017年分から始まった「セルフメディケーション税制」があります。5年間の期間限定であったので、2021年12月31日分までで終了しました。しかし、税制改正により、内容の見直しをはかったうえで、2022年分から2027年分まで期間が延長されました。

「セルフメディケーション税制」は、自分自身で健康に気遣い、軽度な身体の不調は自分で手当てするというセルフメディケーションの取り組みの一環で、一定の取り組みを行う申告者が、「スイッチOTC医薬品(※)」を購入した際、医療費控除の特例が受けられるという制度です。ちなみに、スイッチOTC医薬品とは、要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用され、処方箋がなくてもドラッグストアで購入できるようになった医薬品です。対象となる医薬品は、厚生労働省のサイトで公開されています。

スイッチOTC医薬品を購入した代金が1万2000円を超えた場合、超えた金額が最大8万8000円まで所得から控除されます。

ただし、医療費控除とセルフメディケーションの特例の両方の適用はできません。どちらがよいか検討し、選択してください。

(※)税制改正により、対象薬は経過措置期間を経たうえで、見直しがされる予定です。

配偶者控除と扶養控除

配偶者の控除には、「配偶者控除」と「配偶者特別控除」があり、まず申告者本人の所得が1000万円以下であることが条件です。

その場合、配偶者の年収が103万円以下なら、配偶者控除が受けられます。103万円を超えた場合でも、201万6000円未満なら、配偶者特別控除が受けられます。

扶養控除は、配偶者以外で子どもや親などで生計を一にしている16歳以上の6親等内の血族および3親等内の姻族が対象です。扶養親族は合計所得が48万円以下でなければいけません。また、事業専従者については配偶者控除や扶養控除を受けることはできません。

配偶者(特別)控除の計算

※老人配偶者控除の対象配偶者は、配偶者控除の対象者で、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人。

扶養親族の区分と控除額

扶養控除は、配偶者以外で子どもや親、親戚などの扶養家族がいる場合に受けられます。

なお、下図の老人扶養親族で「同居老親等」の「同居」については、病気の治療のため入院していることで、納税者と別居となり、その期間が結果として1年以上といった長期にわたるような場合であっても、「同居」に該当するものとして取り扱って差し支えありません。ただし、老人ホーム等へ入所している場合には、その老人ホームが居所となりますので、同居しているとはいえません。

ひとり親控除と寡婦控除

令和2年度の税制改正により、2020年分より「ひとり親控除」が新設されました。

ひとり親控除は、婚姻歴や性別にかかわらず、同一生計の子(総所得金額等 48万円以下)を有する単身者に対して、35万円の所得控除が受けられます。また、配偶者と離婚・死別して子以外の扶養親族がいるか、配偶者と死別した単身女性は、寡婦控除が受けられます。

ひとり親控除・寡婦控除いずれの場合も、申告者の合計所得金額が500万円以下であることが要件です。いずれも住民票の続柄に「夫(未届)」「妻(未届)」の記載がある人は対象外です。

さまざまな保険料の控除

保険料といってもさまざまな種類がありますが、自分や家族のために支払った保険料には必ず控除があるのでしっかり確認して申告しましょう。

まず、社会保険料は1年間に払った全額が控除されます。社会保険とは、国民健康保険、介護保険、国民年金保険などです。

支払が遅れていた健康保険料などをまとめて支払った場合は、その全額支払った年の控除対象となります。会社員時代に給与から天引きされていた社会保険料も、確定申告で控除が受けられます。個人事業主になったら自分で申告しなければならないので忘れないようにしましょう。

保険会社に支払っている生命保険、介護医療保険、個人年金保険の保険料も生命保険料控除が受けられます。 控除額の最高額や計算方法は、2012年(平成24年)以降に契約(新制度)したものかどうかで違います。新制度では、一般生命保険、介護医療保険、個人年金保険の3種類があり、それぞれ最高4万円の控除になります。3種とも契約していれば、最高12万円です。また、他にも「地震保険料」の控除もあります。こちらは最高5万円の控除です。

その他の所得控除

税制改正により、2020年分より、基礎控除額は38万円から48万円に引き上げられました。これまで所得金額に関係なく一律38万円だった基礎控除は、合計所得金額が2,400万円を超える個人については、その合計所得金額に応じて控除額が逓減し、合計所得金額が2,500万円を超えるとゼロになります。

所得控除の種類 条件と控除額
基礎控除 合計所得金額が2,400万円までは、48万円。2,400万円超は、その合計所得金額に応じて控除額が逓減し、合計所得金額が2,500万円超で0円になる
寄附金控除 国や地方公共団体、公益法人などに寄付金を支払った場合に受けられる。申告の際には、団体などが発行した寄附金の受領証(領収書)などが必要。寄付金の総額もしくは総所得金額等の40%相当額のいずれか低い方から2000円を引いた額を控除できる。政治活動に関する寄附金、認定NPO法人等に対する寄附金などの場合は、「税額控除」を選択することもできる。「ふるさと納税」も寄附金控除
小規模企業共済等掛金控除 小規模企業共済、企業型確定拠出年金(企業型DC)、個人型確定拠出年金(iDeCo)などの掛金は全額控除できる
雑損控除 災害や盗難などによって損害を受けた場合に、その損失の一部を所得から差し引くことができる。
申告の際には、災害等に関連したやむを得ない支出の金
額の領収書などが必要
また、雑損控除とは別に、その年の所得金額の合計額が1000万円以下の人が災害にあった場合は、災害減免法による所得税の軽減免除の制度があり、どちらか有利な方法を選択できる
勤労学生控除 申告する本人が一定の学生で、年収130万円以下の場合は、27万円の控除
障害者控除 自分や配偶者(控除対象)、扶養親族が障害者の場合。障害の区分によって異なるが、一般の障害者の場合、1人につき27万円

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