給与の決め方のポイント
役員と従業員では報酬の決め方がいくつか異なります。それぞれの報酬を決めるためのルールと、実際にどのように給与を決めればいいのかを解説していきます。
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2022年(令和4年)分の所得税の確定申告の申告期間は、2023年(令和5年)2月16日(木)~3月15日(水)です。最新版の確定申告の変更点は「2023年(2022年分)確定申告の変更点! 個人事業主と副業で注目すべきポイントとは?」を参考にしてみてください!
目次
給与を設定しよう
個人事業主と違って、会社では社長も役員報酬という形で業務の対価を受け取ります。また、従業員を雇用する場合には、給与の支払いもあります。それぞれどのように金額を決めればよいのでしょうか。
役員と従業員の給与の違い
役員報酬と従業員の給与は、税金の計算上はともに給与所得として取り扱われますが、いくつかの違いがあります。
最も大きな違いは、役員報酬は一度決めたら、原則として年度を通じて一定であるという点が挙げられます。役員報酬を意図的に上下できると会社の利益調整につながるなどの理由から、法人税の計算上、年度中に役員報酬を変更できるケースが厳密に決められているのです。
役員報酬の金額は定款で定めがない場合は、株主総会で決定します。役員報酬を決定した場合は、株主総会議事録の形で決議内容を残しておきましょう。この議事録は税務的にも保存することが求められます。
そのほかの違いとしては以下の通りです。
役員 | 従業員 | |
---|---|---|
割増賃金(残業代) | 適用なし | 適用あり |
健康保険・厚生年金保険 | 適用あり(注1) | 適用あり(注2) |
雇用保険・労災保険 | 適用なし | 適用あり |
最低賃金 | 適用なし | 適用あり |
日割り計算 | できない | できる |
注1:非常勤役員で一定の場合は加入義務なし
注2:パートタイマー・アルバイトは1日または1週間の労働時間および1カ月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上あれば加入義務あり
給与金額を決めるポイント
まず、役員報酬は最初のうちは生活費などを考慮して無理ない範囲で決めることをオススメします。起業当初は経営の安定が最優先です。
特に会社員から起業する場合には、会社員時代の給与額と比較せず、1からのスタートであることをしっかりと認識しなければなりません。1年目の業績次第で、2年目以降の金額を見直せばよいでしょう。もちろん起業当初からそれなりの売上が見込めるのであれば、それに応じて金額を決めても構いません。
一方、従業員の給料は役員報酬と違って、最低賃金や、8時間を超えた労働や深夜・休日労働に対する割増賃金など、労働者保護のための制度が適用されます。
また、従業員の人件費は、事務所家賃などと同様に固定費です。売上が上がらないから支給しませんというわけにはいきません。そのため、従業員の給与の額は、資金繰りなどを考慮して、よく検討して決めなければなりません。
予測売上や、仕入れや家賃、光熱費といった支払予測をもとに、無理のない範囲で人件費を決めましょう。月々の金額を抑えて、儲かった分は賞与で還元するなども一つの方策です。
雇用と業務委託の違い
雇用と似ている形態として、業務委託があります。業務委託は雇用に比べて、労働基準法による労働者保護の適用がないため、会社にとっては柔軟で使いやすい契約といえます。
ただし、業務委託かどうかは契約書などではなく、実体で判断しなければなりません。
一つの判断基準として、会社の指揮命令に従っているかということが挙げられます。通常の従業員同様に、定刻に勤務して、会社の指示した業務を行うような場合は、たとえ契約書に業務委託と書いてあっても、実態は雇用となります。
雇用と業務委託では、所得税や消費税などの計算も大きく変わってきます。実態に照らして、どちらが適切かを判断するようにしましょう。