契約社員とパートはどう違う?人を雇う前に押さえておきたい基礎知識
我々は日常的に何となく「正社員」「契約社員」「パート」といった言葉を使っていますが、これらは何が違うのか、ちゃんと理解しているでしょうか?自分が設立した会社が成長し、人手が足りなくなってきて、新たな労働力を確保する必要が出てくる前に、「人を雇う」ということについて予習しておきましょう。
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目次
「正規社員」「契約社員」「パート」は何が違うのか?
当初は自分一人(または少人数)であった会社も、人手が足りなくなってきたら新たな労働力を確保しなければならなくなるわけですが、その際には、どのような形式や条件で人を雇えばよいのでしょうか。
例えば、我々は日常的に何となく「この人は正規雇用でその人は契約社員、あの人はパート」というような区別をしていますが、これらはどう違うのでしょう。自分が人を雇いたい場合に、どのような観点で形式を選択すべきかを解説します。
法律的に重要なのは期間の定めの有無
実は、「正社員」や「契約社員」などは、法律上の分類ではありません。
法律的な分類は、「就労契約の期間が決まっている社員」と「決まっていない(無期限の)社員」の二種類のみ。両者の大きな違いは、企業側が契約更新の有無を選ぶチャンスがあるかどうかという点です。
企業側から見ると、一度雇い入れた人との雇用関係を終了させる方法は、大きく二つあります。
- 解雇
- 契約期間の終了に伴い、契約更新を行わない
「解雇」を行うのは、なかなか大変です。裁判所が「解雇」を行うための条件として要求する「合理的な解雇理由」のハードルはかなり高いですし、解雇の手順もきちんと守らなければならず、時間がかかります。
そうは言っても、履歴書と面接だけでずっと一緒に働く人を選ぶのは困難。一緒に働いてみなければわからない面もあるはずです。
「就労契約の期間が決まっている社員」の場合、契約期間の上限は法律上原則1年。それ以上雇用関係を続けるには、契約を期間満了ごとに更新していくこととなります。そして、更新するかはお互いに自由。したがって、企業は契約期間終了時に契約を更新しないことができます。
ただし、労基法の改正により、昨年から、契約の更新期間が5年を超えたら無期労働契約とみなされるようになりました。これは正社員になるという意味ではないものの、企業側から契約期間満了を理由とする契約の終了はできなくなります。
重要なのは契約条件の違い
一般的には、「正社員はあらゆる意味で契約社員より保護されている」というようなイメージがあるかもしれませんが、法律上の大きな立場の違いは上述のものくらいです。法律上はどちらも「労働者」にあたるので、労働基準法等の労働者を保護する規定はほぼ同様に適用されます。
大きな違いを生んでいるのは、それぞれの契約条件です。
多くの企業では、福利厚生や賞与、昇給、退職金などの契約条件で正社員の方が有利。例えば、社会実態的に、「派遣社員」はボーナスや退職金が不要で、「契約社員」だとボーナス・退職金付きであることが多いけれど、それはあくまで「何となく皆がそういうものだと思っている」ためにそういった契約にしているだけ。法律で定められているわけではありません。正社員だから/契約社員だからこのような契約条件が必要、などということはないのです。
したがって、企業としては、契約関係の名目にとらわれず、自社に適した契約条件を提示し、締結することができます。
「パート」を雇うだけでも労災保険は必要
人を雇う場合に、雇用者が加入すべき保険として労災保険と雇用保険があります。
人を雇う以上は必ず入らなければならない労災保険は、元々は使用者の為の、労働者へ対する労働中の災害の補償の為に加入する保険で、費用は比較的低額です。
家族以外の他人の従業員が一人でもいたら、労災保険への加入手続きが義務付けられます。 1日に数時間のアルバイトやパートのみでも強制加入です。
一方、雇用保険は、週の労働時間が20時間以上で、かつ、31日以上雇用する場合に加入が義務付けられます。アルバイトやパート等の名称を問わず、上記の条件を満たした場合は、加入の手続きをとる必要があります。
お互いにとってベストな形式で契約を
今まで述べてきたように、雇用形態によって大きく異なるのは、契約期間の有無による契約期間更新の点のみです。
では、契約期間がある社員とない社員、どちらを選ぶべきでしょうか。
契約期間がある社員を選ぶ最大のメリットは、長期的な試用ができるという点。今は人手が足りないが、それが一時的なものと考えられる場合、仕事は減ったが人だけ残る、という事態も避けられます。また、社会実態として派遣社員や契約社員であれば要求される福利厚生の程度は正社員に比べて下がるため、人件費を削減できるメリットもあるようです。
一方で、契約期間がない社員、すなわち正社員は、企業から見れば一度採用するとずっと雇い続けなければいけません。また、社会実態に照らせば福利厚生費などの人件費増加も免れません。
しかし、スタッフの定着による採用コスト抑制や長期的な人材の確保、習熟したスタッフによる生産性の向上などを見込むことが可能です。また、非正規社員にはない管理職や専任職へのキャリアパスも用意することで採用競争力を高め、優秀な人材を効率的かつ迅速に確保することも期待できます。
一般論として、労働者の目線に立てば長く働くには正社員の就業条件の方が適していると言えることから、人材の確保という点においては有利と言えるでしょう。
会社の現状に照らしてどのような人材が必要かを考え、適した雇用形態を選択しましょう。
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