システム開発契約では契約書が超重要!3大チェックポイントとは?
自分がベンダーとしてシステム開発を行う人、ユーザーとしてシステム開発を委託する人は多いはずです。ただ、システム開発は、紛争になって「泥沼化」することが非常に多いタイプの契約です。スモールビジネス事業主も、システム開発契約を締結する際には契約書を慎重に作成したり、チェックしたりする必要があります。
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目次
システム開発契約は「紛争の泥沼化」が多い
「システム開発契約を締結したのに、 納期になっても開発が終わらない……」というのは、ベンダー側にとってもユーザー側にとっても問題です。しかし、さらに法律的な紛争にもなってしまったら、もう目も当てられません。
システム開発契約から生じる紛争の「泥沼化」は、契約書によって防止することが可能です。だからこそ、契約書の作成や、相手が作成した契約書のチェックが非常に重要なのです。
引用:『JEITAのモデル契約書』
システム開発の契約書チェックポイント
「契約書なんてネットで探したテンプレートを埋めるだけで良い」「相手から渡された契約書にそのままサインすれば良い」というのは、特にシステム開発契約においては、非常に危険です。
システム開発は、極めて個別性が高いタイプの契約です。また、残念ながら、開発が遅れに遅れて最終的に頓挫する危険もあります。万一そうなってしまった場合に問われるのは、「この契約は具体的にどのような契約だったのか」ということです。
そして、どんなに口頭でのミーティングを重ねたとしても、事後的に振り返った時に「客観的な証拠」と言えるのは、結局契約書だけ……という場合が多いのです。
自分がベンダー側であれユーザー側であれ、「自分がどのような契約を締結したのか」ということを、可能な限り明確に契約書に記載しましょう。実務上、特に問題になるケースが多い3個の点について解説します。
チェックポイント1:報酬の支払時期はいつか
システム開発契約では、報酬の支払い時期が2通りあり得ます。仕事の完成時か、労務提供後か、ということです。すなわち、
-
- 仕事の完成時→ベンダー側がすべき事をしたとしても、結果としてシステムが完成しない限り、報酬を請求することはできない
- 労務の提供後→ベンダー側がすべき事をすれば、システムが完成しなくても報酬を請求することができる
という違いです。本件の契約がどちらのタイプなのか、契約書上で明確になっているでしょうか?
チェックポイント2:契約内容は明確になっているか
実際に裁判にまで発展する紛争の多くは、「そもそもベンダーが何を開発することになっていたのか不明確である」というケースです。
例えば、
- ユーザーのシステムが現時点で抱えている「ある問題」を
- ベンダーが「ある手段」で解決する
というシステム開発だとして、1の「問題」や2の「手段」が何なのか契約書上で明らかにされていないため、事後的に
- その「問題」は契約締結時に明らかにされていなかったのではないか
- その「手段」を採ることは契約締結時に合意されていなかったのではないか
といった点で争いになり、交渉がまとまらず、裁判にまでなる。……というケースが、実際問題として多いのです。
契約締結時には、「問題」「手段」について、可能な限り具体的に契約書上に明記しておきましょう。「契約書として体裁が悪い」などと気にするよりは、明確性を優先すべきです。
例えば、「データベースに格納されているデータ間に整合性がない(整合性がないデータを格納してしまうという問題がある)」ということが「問題」だという場合なら、
- 整合性がないことによって発生する問題は何か
- 実際のデータベース内データをベンダーに開示して「問題」の所在を明らかにしたかどうか
- それを解決すべき「問題」であることが契約内容として合意されていたかどうか
といった情報が、契約書(や添付された資料)から明らかになっているでしょうか?
チェックポイント3:プロジェクトマネジメント義務とユーザーの協力義務の存在及び範囲
システム開発は、ベンダーとユーザーの共同作業です。契約締結時に予定されていなかったトラブルが生じ、開発が正常に進行しなかった場合には、ベンダーとユーザーが相互に協力しながらトラブルを解決する必要があります。
トラブルが生じた場合、ベンダー側には要因発見や対処を行う義務(プロジェクトマネジメント義務)があり、ユーザー側にはベンダーから示された懸案事項を解決する義務(協力義務)がある、と考えられています。
これらの義務が双方にあること、一方が義務を果たさなかった場合には損害賠償責任を負う旨が、契約書に規定されているでしょうか?
「想定外の問題が生じた場合」の話ですから限界はありますが、「義務の範囲」を可能な限り明確なように記載することをおすすめします。
知っておきたい基礎知識|法務|まとめINDEX
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