青色申告ができる所得とできない所得と条件
監修者 : 宮原 裕一(税理士)
節税効果の高い青色申告ですが、誰でもできるわけではありません。まず、個人事業主の場合、事前に「所得税の青色申告承認申請書」を提出して、承認されている必要があります。そして、法律では「所得」は10種類に分けられています。10種類ある所得のうち「事業所得」「不動産所得」「山林所得」の3種類のいずれかを得ている個人事業主が青色申告をすることが認められています。
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目次
青色申告ができる3種類の所得
青色申告できるのは「事業所得」「不動産所得」「山林所得」のいずれかの所得がある個人事業主です。個人事業主は、事業を開始したら、開業から1カ月以内に「個人事業の開業届」を税務署に届け出る必要があります。
会社員は給与所得なので青色申告はできませんが、副業で3つのうちいずれかの所得があれば、青色申告ができます。

事業所得
個人事業主・フリーランスが営む事業で得た所得は、事業所得になります。法人に属さないライターやカメラマン、税理士や医者のほか、飲食店や衣料品店、農業、漁業などを営んでいる人も個人事業主です。
不動産所得
アパートやマンションの家賃収入など、不動産の貸し付けで得た所得を不動産所得といいます。他にも、地上権など不動産の上に存する権利の設定および貸付け、船舶や航空機の貸付けで得た所得も不動産所得になります。
なお、不動産所得の場合、事業的規模で貸し付けを行っているかどうかで取扱いが変わってくるのが特徴です。事業的規模かは、建物の貸し付けでは「5棟10室基準」というものがあります。戸建であれば5棟以上、アパート・マンションなどは10室以上を貸していれば事業的規模と判断できるでしょう。
山林所得
山林所得とは、山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡することによって得た所得のことです。山林を取得してから5年以内に伐採または譲渡した場合は、山林所得ではなく事業所得か雑所得になります。また、山林を山ごと譲渡する場合の土地の部分は、譲渡所得になります。
青色申告できない7つの所得
給与所得
給与所得とは、会社員やパート・アルバイトが勤務先から受け取る給料や賞与による所得です。毎月の給料などから、所得税などが天引きされて勤務先が代わりに税務署に納付します。そして、年末に年末調整をすることで、申告が完了するので、原則として給与所得者は、所得税の確定申告をする必要はありません。
退職所得
退職所得とは、会社員が退職により勤務先から一時金として受け取る退職手当などの所得をいいます。社会保険制度の退職一時金、適格退職年金契約による退職一時金なども該当します。退職所得は分離課税の対象で、他の所得と分けて計算します。
譲渡所得
譲渡所得とは、一般的に、土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得をいいます。事業用の商品などの棚卸資産や山林などの譲渡による所得は、譲渡所得にはなりません。株式、投資信託、債券、土地や建物を売ったときの譲渡所得は、分離課税の対象になります。株の売買による収入は一般的に譲渡所得になります。
配当所得
配当所得とは、株主や出資者が法人から受ける剰余金や利益の配当、剰余金の分配、基金利息、投資法人からの金銭の分配、投資信託の収益の分配などによって得た所得のことです。
利子所得
利子所得とは、預貯金や公社債などの利子、公社債投資信託や公募公社債等運用投資信託の収益の分配などで得た所得をいいます。個人間の貸付の場合、貸し手である個人事業主が事業として貸し付けた場合は、利子所得ではなく、事業所得になります。
一時所得
一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価などに該当しない一時の所得のことです。懸賞や福引きの賞金品、競馬や競輪の払戻金、生命保険の満期保険金と損害保険の満期返戻金などがこれに当たります。
雑所得
雑所得とは、上記9つのどれにも該当しない所得をいいます。公的年金や講演料、(作家以外の人の)原稿料・印税、FXでの収入、非営業用貸金の利子などが該当します。事業規模でない「副業」の所得も雑所得になります。
青色申告ができる人
青色申告には3通りあります。「10万円控除」のほうであれば、上で説明した3つの所得(「事業所得」「不動産所得」「山林所得」)に当てはまる人で、「開業届」と「所得税の青色申告承認申請書」を提出している個人事業主なら誰でもできます。
しかし「65万円控除(もしくは「55万円控除」)を受けることができるのは、事業所得がある人か「事業的規模」と認められる不動産所得のある人に限られます。ちょっとした副業で雑所得になる場合は、青色申告の対象外となってしまいます。
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会社員でも青色申告ができるケース
給与所得では青色申告はできませんが、会社員をしながらマンションの家賃収入などの不動産所得もある人は青色申告をすることができます。ただし、ある一定以上の事業規模でないと、65万円控除(もしくは55万円控除)は認められないので10万円控除となります。 また、株の配当金は、配当所得、株の売買による儲けは譲渡所得なので青色申告はできません。白色申告をすることになります。
不動産所得がある場合
不動産所得がある場合は、10万円控除の青色申告が認められます。事業的規模なら65万円控除(もしくは55万円控除)適用も可能です。
株の配当金や株の売買の場合
株の配当金は配当所得、株の売買による儲けは譲渡所得なので青色申告はできません。白色申告をすることになります。

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