あらためて知っておきたい! 支払調書について【まとめ】

支払調書とは、「特定の支払いをした事業者が、その明細について記載して、税務署に提出する書類」のことです。事業者にとっては、税務署に提出が義務づけられている「法定調書」です。そして、報酬を受け取る側は、支払調書がなくても確定申告はできるのでしょうか?あらためて支払調書について知るために、これまで『スモビバ!』で解説された記事をまとめてみました。
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目次
1.支払調書とは
支払調書には、いくつかの種類がありますが、個人事業主に対して支払うケースでもっとも多いのが、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」です。以下のような支払いを行った場合に、事業者は税務署に「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を提出しなければなりません。
- 外交員、集金人、電力量計の検針員、プロボクサー、バー、キャバレーなどのホステスの報酬で、年間の合計金額が50万円を超える場合
- 競馬の賞金で75万円を超えている場合は、その年すべての支払金額を提出
- プロ野球選手をはじめプロスポーツ選手の報酬や契約金で、年間の合計が5万円を超える場合
- 弁護士や税理士への報酬、作家や画家への原稿料や画料、講演料で、年間の合計が5万円を超える場合
- 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬が50万円を超える場合
逆の立場から考えると、報酬を受け取った個人事業主は、支払調書を受け取ることで、取引先が税務署に報告した「報酬と源泉所得税額」を確認することができます。
【参考記事】
・支払調書ってどんな書類? 必ず必要なの?
2.支払調書と源泉徴収の違い
支払調書と、よく似ているのが「源泉徴収票」です。給与所得者である会社員に対しては、企業が源泉徴収票を発行します。
源泉徴収票も支払調書も、事業者が税務署に提出しなければならない点では同じですが、違いがあります。源泉徴収票は税務署と従業員の双方に提出しなければなりませんが、支払調書については、税務署への提出のみが義務づけられています。
言い換えると、源泉徴収票は、給与を支払った人に対して必ず発行しなければなりませんが、支払調書は、報酬を支払った人に対しては発行をする法的な義務はないということです。現状、支払調書はこれがないと確定申告が適正にできないフリーランスのために、企業側がサービスとして発行しているということになります。
実際に「支払った取引先に、支払調書を発行しない」という事業者も出ています。そのため、支払いを受ける側は、支払調書をもとに記帳をするのではなく、請求書にあらかじめ源泉徴収税額を記載して発行するなど、日々の取引をしっかり把握し、記帳するよう心掛けておくことが大切です。
【参考記事】
・どこが違うの? 支払調書と源泉徴収票
・どうすればいい?フリーランスの外注問題。支払調書は発行すべきか?
3.支払調書の作成の仕方
該当する支払があった場合、事業者は、支払調書を発行して税務署に提出します。記載する内容は、支払先の住所や氏名、報酬額や源泉徴収額、マイナンバーです。
もし、支払調書作成の時点で未払い分があれば、忘れずに記入しましょう。あとは、報酬を支払った側の住所(居所)または所在地、氏名、電話番号を記入すれば、完成です。
ただ、これはあくまでも税務署に提出する場合です。前述したように、報酬の支払先に対しては支払調書を発行する義務はありませんが、商慣習として発行することもあるでしょう。その際は、マイナンバーは記載しない、という点に注意しましょう。マイナンバーを記載するのは、税務署に提出する分のみです。
また、税務署に支払調書を提出する際は、複数の取引先への分を合わせて提出することがほとんどだと思います。その合計を出して、「支払調書合計表」(正式名称は「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」)を提出することになります。
【参考記事】
・経営者なら知らないとヤバい!支払調書の作成方法
・はじめての支払調書の書き方
4.支払調書がなくても確定申告はできる
さて、これまで支払調書を発行する側のことを説明してきましたが、フリーランス・個人事業主の方のなかには、確定申告の作業を始めるにあたって、取引先から支払調書を心待ちにしている人も少なくないでしょう。
私もその一人です。遅いところには、支払調書の送付の催促をすることもありますが、これは正確には、正しい行動ではありません。
というのも、前述したように、支払調書は、支払った側が取引先に対して発行しなければならないという義務があるものではないからです。
それでも「確定申告書に支払調書を添付しているから、ないと困る」という方もいるかも知れません。しかし、発行義務がないように、本来、確定申告書には「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」添付の必要はないのです。送られてきた支払調書は、封筒などに入れほかの帳簿と同様に保管しておきましょう。
そもそも、支払調書に書いてあるのは、その1年間の支払いが確定した金額ですから、支払日が翌年のものは反映されていません。つまり、支払調書に書かれている金額と本来の収入が一致しないことが当然ということになります。
現に、最近では、支払調書の発送をやめている企業も増えてきており、この傾向は今後強まりそうです。個人事業主は、支払調書をもらえない場合に備えて、普段から請求、支払い、源泉徴収額などを把握して、きちんと帳簿で管理しておく必要があります。
【参考記事】
・支払調書が来ない、届かない。確定申告できない!?
・「源泉所得税のある請求書」の発行の仕方と取引の仕訳方法
・「確定申告の疑問」を税理士にズバリ聞いた!第2回青色申告編
・支払調書がもらえない! これって確定申告できるの?
以上、支払調書について、まとめました。源泉徴収票との違いも含めて、しっかりと理解して、事業者として発行するときが来ても、慌てないようにしましょう。
そして、報酬を受け取る側は、支払調書がもらえなくても、確定申告ができるようにしておきましょう。
photo:Getty Images