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不動産賃貸業は確定申告すべき?青色申告の要件や注意点を解説

2023/12/25更新

この記事の監修田中卓也(田中卓也税理士事務所)

不動産の賃貸で、一定の基準を超える所得がある場合は所得税の確定申告が必要です。この場合の一定の基準とは、収入源が不動産賃貸業だけの場合は、所得金額が48万円を超えるとき、給与所得のほかに不動産賃貸業で所得を得ている場合には20万円を超えるときです。

なお、不動産賃貸業で所得がある場合、青色申告特別控除が活用できます。不動産賃貸業が青色申告特別控除などのメリットを得るためには、どのように確定申告をすればよいのでしょうか。

本記事では、不動産賃貸業で青色申告特別控除の最大65万円または55万円、あるいは10万円を適用する条件や、不動産賃貸業で確定申告をする場合の注意点、不動産賃貸業が事業として認められる規模に該当しない場合の注意点、確定申告方法などについて解説します。

不動産賃貸業は確定申告が必要

不動産を人に貸して所得を得る不動産賃貸業を営んでいる人は、その人の働き方や所得金額によって、確定申告が必要となる場合があります。なお、不動産収入と不動産所得とでは意味が異なる点に注意が必要です。不動産収入は、家賃収入など主に不動産を運用して得た収入の総額を指し、一方の不動産所得は不動産収入から経費を差し引いた残りの額を意味します。

確定申告が必要かどうかは、他に給与所得があるかどうかといった働き方や所得の合計額などによって異なります。確定申告が必要となる場合は以下のとおりです。

勤務先で年末調整を受けていて副業で不動産賃貸業を営んでいる

勤務先で年末調整を受けている人は、年間の不動産所得と給与所得以外の所得の合計が20万円を超える場合に確定申告が必要です。

ただし、医療費控除の適用を受けたいなど、不動産賃貸業の申告以外の理由で申告を行う場合は、不動産賃貸業の所得額にかかわらず、不動産賃貸業の所得についても申告しなければなりません。

自営業者などで不動産賃貸業を営んでいる

自営業者など、そもそも確定申告が必要な事業を営んでいる人が、本業と別に不動産賃貸業も営んでいる場合は、不動産賃貸業の所得についても申告しなければなりません。また、所得が不動産賃貸業のみの場合は、その所得が48万円を超えたら確定申告を行います。

ただし、所得20万円以下であっても、不動産賃貸業を主な生業としているのであれば、所得の証明や住民税の申告などのために確定申告をしておくことをおすすめします。

不動産所得に分類される所得

不動産所得に分類されるのは、アパートやマンション、戸建てなどを人に貸して得た収入です。たとえ金額が少額でも、不動産を人に貸して賃貸料を受け取ったのであれば不動産所得に該当します。

不動産所得に該当する収入

  • 土地や建物などの不動産の貸し付け
  • 地上権など不動産の上に存する権利の設定および貸し付け
  • 船舶や航空機の貸し付け

なお、不動産所得には、賃貸料の他、更新料や礼金なども含まれます。一方で、食事付きの下宿のように、不動産の貸し付けだけでなく食事の提供を伴う場合は、不動産所得ではなく事業所得または雑所得になります。

不動産賃貸業で計上できる主な必要経費

不動産所得は、賃貸収入から必要経費を差し引いて算出します。不動産所得の算出方法と、不動産賃貸業で経費計上できる主な費用は以下のとおりです。

不動産所得の算出方法

不動産所得=総収入金額-必要経費

不動産賃貸業で計上できる主な必要経費
必要経費 内容
委託管理費や手数料 賃貸物件の管理を依頼している管理会社などに支払う管理費や手数料など
税金 家賃や地代などを得ている賃貸物件の固定資産税や都市計画税、物件取得時にかかる不動産取得税や登録免許税、不動産賃貸業の所得が一定以上の場合に発生する事業税などが該当する
減価償却費 賃貸物件の購入金額や建物付属設備、構築物等は、減価償却して計上する
管理費 マンションを賃貸物件として保有している場合に生じる管理費
修繕積立費 マンションを賃貸物件として保有している場合に生じる修繕積立金。ただし、区分所有者への返還義務を有しないものに限る
損害保険料 賃貸物件が火災などに遭った際に補償を受けるための保険料
ローン返済などの利息 ローンで賃貸物件を購入した場合に発生する利息
税理士・司法書士の報酬 不動産賃貸業を営むうえで、税理士や司法書士と契約している場合に支払う報酬
自然災害による損失

地震などによって保有物件が被害を受けた際は、損失を経費計上できるが、事業として認められる不動産賃貸業なのか、事業として認められない不動産賃貸業なのかで処理が異なる。

事業として認められる不動産賃貸業の場合、その損失の金額を必要経費に算入することができ、損益通算してもなお引ききれなかった損失の金額は翌年以降3年間繰り越すことができる。

一方、事業として認められない不動産賃貸業の場合、経費に算入できるのは不動産所得の金額が黒字の範囲内のため、損失を経費計上した結果、不動産所得の金額が赤字であっても0円とみなす

青色事業専従者給与

事業として認められる不動産賃貸業で、青色申告事業者の不動産賃貸業を一定の要件を満たす配偶者や親族が手伝っている場合、支払った給与を経費にできる。

白色申告の場合は経費にはならないが、別途事業専従者控除を利用できる。

一方、事業として認められない不動産賃貸業の場合、青色申告の事業専従者給与または白色申告の事業専従者控除も適用がない

回収不能の家賃

回収不能の家賃があった場合、事業として認められる不動産賃貸業なのか、事業として認められない不動産賃貸業なのかで処理が異なる。

事業として認められる不動産賃貸業の場合、回収不能に陥った家賃を経費計上できる。

一方、事業として認められない不動産賃貸業の場合、経費に算入できるのは不動産所得の金額が黒字の範囲内であるので、不動産所得の金額が赤字であっても0円とみなす

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不動産賃貸業で青色申告特別控除の最大65万円または55万円を適用する条件

不動産賃貸業においても、条件を満たせば最大65万円または55万円の青色申告特別控除を利用できます。ここでは、青色申告特別控除の最大65万円または55万円控除を利用する条件について解説します。

なお、青色申告をしたい年の期日までに「所得税の青色申告承認申請書新規タブで開く」を提出していることが前提となります。「所得税の青色申告承認申請書」の提出期限は、青色申告書による申告をしようとする年の3月15日まで、あるいは不動産の貸付けを開始した日から2か月以内となるため、注意が必要です。

1. 不動産貸付を事業として行っていること

不動産賃貸業で最大65万円または55万円の青色申告特別控除を適用する条件として、不動産貸付を事業として行っていることが挙げられます。事業として認められる規模に該当するかどうかは、原則として物件数が以下に当てはまるかどうかで判断されます。

事業として認められる規模の条件

  • マンションやアパートの賃貸を行っている場合、おおよそ10室以上
  • 戸建ての場合、おおよそ5棟以上

なお、上記は実際に賃貸できる物件の数です。所有しているだけで不動産賃貸業に利用することはできない物件は含まれません。

なお、事業として認められる規模かどうか判断する際には、駐車場経営の場合は、5台分を1部屋、貸室と貸家の両方を所有している場合には2部屋を1棟として取り扱うため、必ずしも、「アパート・マンション経営だけで10室以上」ということではありません。

一方、事業として認められる規模に該当しない不動産賃貸業で青色申告をしている場合は、10万円の青色申告特別控除が適用できます。

2. 取引の内容を複式簿記(正規の簿記の原則)で記帳していること

最大65万円または55万円の青色申告特別控除の適用を受けるために、取引の内容を複式簿記(正規の簿記の原則)で記帳していることも必要です。青色申告をするためには、日々の取引を複式簿記で記帳する必要があります。複式簿記とは、1つの取引を借方と貸方の2つの勘定科目で記録する方法です。

3. 青色申告決算書(不動産所得用)を確定申告書に添付していること

青色申告決算書(不動産所得用)を確定申告書に添付していることも、最大65万円または55万円の青色申告特別控除の適用を受けるための条件のひとつです。青色申告決算書は、不動産所得用を使用します。

青色申告決算書は、貸借対照表と損益計算書の計4枚で構成されています。最大65万円または55万円の青色申告特別控除を利用する場合は、4枚すべて作成しなければなりません。10万円の青色申告特別控除を利用する場合、貸借対照表は不要です。

4. 確定申告の期限内に申告・納付をしていること

最大65万円または55万円の青色申告特別控除を利用するためには、確定申告の期限を守る必要があります。期限を過ぎた場合、その他の要件をすべて満たしていても青色申告特別控除の額は10万円になります。

5. e-Taxによる申告または優良な電子帳簿保存をしていること

1から4までの条件のすべてを満たせば、最大55万円の特別控除を適用できます。さらに最大55万円の要件を満たしたうえで、e-Taxによる申告、または優良な電子帳簿保存をしている事業者は、最大65万円の青色申告特別控除を適用できます。

青色申告のメリットについてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

不動産賃貸業で確定申告をする場合の注意点

不動産賃貸業の確定申告には、いくつかの注意点があります。不動産賃貸業ならではの特徴を踏まえて、正しい申告を心掛けましょう。ここでは、3つの注意点について解説します。

家賃の支払日と計上時期

不動産賃貸業で確定申告をする際、家賃の支払日と計上時期に注意が必要です。不動産賃貸業の確定申告では、受け取った家賃や礼金などを「収入」として申告することになります。このときに気を付けたいのは、実際に家賃を受け取った日ではなく、契約によって決められた支払日に家賃を収入として計上しなければならない点です。

例えば、賃貸借契約書に賃料は毎月27日までに翌月分を支払うと定められている場合、毎月27日に家賃を収入として計上しなければなりません。不動産所得の計上時期は以下のとおりです。

不動産所得の計上時期

  • 契約や慣習などにより支払日が定められている場合は、その定められた支払日
  • 支払日が定められていない場合は、実際に支払いを受けた日。ただし、請求があったときに支払うべきものと定められているものは、その請求の日
  • 賃貸借契約の存否の係争など(未払賃貸料の請求に関する係争を除く)にかかる判決、和解などにより不動産の所有者などが受け取ることになった係争期間中の賃貸料相当額については、その判決、和解などのあった日

経費として計上できる項目とできない項目がある

不動産賃貸業で確定申告をする場合には、経費として計上できる項目とできない項目がある点にも注意しましょう。不動産賃貸業では、一見、経費にできるかどうか判断に迷いやすい費用もあります。経費にできるかどうかの判断を間違えないよう確認が必要です。経費にできないもののうち、特に注意しておきたいのは以下の3点です。

経費に計上できない項目

  • 住宅ローンの支払額:物件の購入費用は減価償却費として計上するため、住宅ローンの元本の支払額は経費計上できない。一方、賃貸している土地や建物を購入するための借入金の利子は必要経費に算入できる
  • 所得税や住民税:所得税や住民税
  • 個人的な支払い:自宅の修繕費や個人的な飲食費などは経費計上できない

兼業や副業で不動産賃貸業をしている場合は不動産賃貸業のみの決算書が必要

不動産賃貸業の他に、本業となる事業所得がある場合、不動産賃貸業のみの決算書を作成しなければなりません。これは、不動産賃貸業での所得が事業所得ではなく、不動産所得に該当するためです。本業と副業などで、複数の事業所得がある場合はまとめて決算書を作れますが、事業所得と不動産所得を1つの決算書にまとめることはできません。なお、給与所得者が副業で不動産賃貸業を営んでいる場合は、不動産賃貸業のみに関する決算書を作成します。

不動産賃貸業が事業として認められる規模ではない場合の注意点

これらの注意点に加え、不動産賃貸業が事業として認められる規模に該当しない場合は、さらに以下の点にも注意が必要です。

青色申告特別控除は最大10万円になる

不動産賃貸業が事業として認められる規模ではない場合、最大65万円または55万円の青色申告特別控除は適用できず、控除額が最大10万円となります。ただし、一般事業の事業所得と不動産賃貸業を兼業している場合は、不動産賃貸業が事業的規模か否かは問われません。その場合、青色申告特別控除は不動産所得、事業所得の順で差し引くので、事業所得が赤字でも不動産所得から65万円の控除が可能です。

青色事業専従者給与、白色申告の専従者控除が適用できない

配偶者や親族が事業を手伝っていたとしても、事業として認められる規模でない場合、青色申告専従者給与や白色申告専従者控除の対象にはなりません。

建物の取り壊しなどにかかった費用は一部しか経費にできない

事業として認められる規模でない場合は、賃貸物件を取り壊した際の損失について、その年の不動産所得額が経費算入の上限となります。事業として認められる規模であれば、全額を必要経費として算入可能です。したがって、後者の場合には、給与所得など他の所得の金額との損益通算が可能である他、損益通算の結果残った赤字についても、青色申告の承認申請を受けている場合には、翌年以降3年間の所得の金額から繰越控除を受けることができます。

不動産賃貸業の確定申告を簡単に終わらせる方法

不動産賃貸業の確定申告は、事業所得とは別に青色決算書や収支内訳書を作成し、行う必要があります。また、給与所得者でも、一定以上の不動産所得がある場合は確定申告をしなければなりません。

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この記事の監修田中卓也(田中卓也税理士事務所)

税理士、CFP®
1964年東京都生まれ。中央大学商学部卒。
東京都内の税理士事務所にて13年半の勤務を経て独立・開業。
従来の記帳代行・税務相談・税務申告といった分野のみならず、事業計画の作成・サポートなどの経営相談、よくわかるキャッシュフロー表の立て方、資金繰りの管理、保険の見直し、相続・次号継承対策など、多岐に渡って経営者や個人事業主のサポートに努める。一生活者の視点にたった講演活動や講師、執筆活動にも携わる。

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