白色申告のやり方完全ガイド【2023年版・令和4年分】書類の書き方や流れを解説

個人事業主の確定申告には、白色申告と青色申告の2種類があります。白色申告が簡単と聞きますが、どのような流れで確定申告をするのでしょうか。また、白色申告と青色申告でどのような違いがあるのでしょうか。白色申告のやり方や、白色申告のメリット・デメリットについて解説します。
【2022年(令和4年)分の確定申告】 対象期間:2022年1月1日~12月31日 所得税の確定申告 2023年(令和5年)2月16日(木)~3月15日(水)が申告期間 個人事業主の消費税の確定申告 2023年(令和5年)1月4日(水)~3月31日(金)が申告期間
[おすすめ]ずっと無料のクラウド申告ソフト「やよいの白色申告 オンライン」
2022年(令和4年)分の所得税の確定申告の申告期間は、2023年(令和5年)2月16日(木)~3月15日(水)です。最新版の確定申告の変更点は「2023年(2022年分)確定申告の変更点! 個人事業主と副業で注目すべきポイントとは?」を参考にしてみてください!
目次
- 白色申告は、個人事業主に限らずすべての納税者が対象となる確定申告の方法
- 白色申告の帳簿付けは、お金の動きを記入しないのでお小遣い帳よりも簡単
- 白色申告は、記帳が簡単な分、青色申告のような税制上のメリットを受けられない
白色申告とは?
白色申告は、個人事業主に限らず、会社員や年金生活者など全ての納税者が対象となる基本的な確定申告の方法です。
所得税の確定申告は、納税者がその年の所得と税額を計算し、税務署に申告して納税するという流れで行います。その中で、個人事業主にとって、白色申告はシンプルな帳簿付けで申告を済ませることできるのが特徴です。
白色申告でも帳簿付け(記帳)は必要?
所得税の計算の基になる所得金額は、次の算式で計算します。
所得金額=収入金額-必要経費
白色申告では、売上などの収入金額と、仕入れや諸経費などの必要経費の集計ができればよいので計算をシンプルに行うことができます。
ただし、白色申告であっても、事業所得、不動産所得、山林所得がある事業者はその収入金額や必要経費がどのように集計されたかを確認できるよう、記帳義務(帳簿付けの義務)が課されています。
青色申告との違い
事業所得、不動産所得、山林所得のある個人事業主には、白色申告に対して、青色申告という確定申告の方法があります。
白色申告との大きな違いは、青色申告は納税者本人が青色申告をすることを選択し、税務署にその承認申請をして、はじめて青色申告による申告ができる点です。そして、白色申告に比べて帳簿付けの難易度が上がりますが、難しくなる分さまざまな税務上のメリットを受けることができるようになります。
白色申告のメリット
白色申告のメリットは、特に申請も必要なく、記帳も申告手続きも簡単な点です。
収入金額や必要経費を集計することで申告ができるので、確定申告に苦手意識を持つ人にとっては最適の申告方法だといえるでしょう。
記帳と手続きが簡単
白色申告では、収入金額や必要経費を時系列で一覧にまとめていく簡易な記載方法による帳簿付けが認められています。

図のとおり、単純に収入金額や必要経費を並べていく様式となっています。この様式では、残っているお金がいくらかという計算すら行わないので、お小遣い帳よりも簡単な帳簿と言うことができますね。
必要書類の記載項目が少ない
個人事業主が確定申告をする場合には、事業所得などの収入金額や必要経費について、項目ごとの集計結果や計算明細を記入した書類を添付しなければなりません。白色申告の場合は「収支内訳書」、青色申告の場合は「青色申告決算書」というものになります。
収支内訳書が2ページで済むのに対し、青色申告は4ページに渡って記載する必要があるため、提出書類の作成という点でも簡単に終わらせることができますね。

白色申告のデメリット
白色申告のデメリットとして挙げられるのは、青色申告で受けられるさまざまな税制上のメリットがないということです。
特別控除がない
青色申告には、帳簿付けの難易度に応じて最大10万円から最大55万円(さらに条件を満たせば65万円)までの金額を、所得金額から控除することができる青色申告特別控除という制度が用意されています。一方、白色申告にはそのような特別控除制度はありません。
赤字の繰越ができない
その年の事業所得などが赤字だった場合に、他の所得の黒字と相殺してもなお赤字が残ったときの赤字を「純損失」と言います。
青色申告には、純損失が出た年の翌年以降3年間繰り越して、翌年以降の黒字と相殺することができる「純損失の繰越」という制度が用意されています。
白色申告の場合、純損失の繰越はごく一部の限られたケースでしか認められません。例えば、災害により事業用の資産が被害を受けた場合に生じた損失については、3年間の繰越控除が認められています。この災害には、新型コロナウイルス感染症に関連した損失(感染による廃棄損や除却損、消毒作業などの費用など)も含まれます。
30万円未満の減価償却資産を一度で経費にできない
一組又は一式で10万円以上の資産を購入等した場合には、その資産の種類に応じて決められた年数で分割して経費化していく減価償却というルールがあります。青色申告には、30万円未満の減価償却資産について、この減価償却のルールにかかわらず年間300万円までを一度に必要経費とすることができる少額減価償却資産の特例という制度が用意されています。
なお、青色申告・白色申告にかかわらず、10万円未満の減価償却資産については、消耗品費などとして、一度の経費となります。

白色申告に必要な書類
個人事業主が確定申告を白色申告で行う場合、最低限必要な書類は「確定申告書」と「収支内訳書」の2つです。
確定申告書
確定申告書の様式には、5種類のものがあります。
- 第一表 所得や税額の計算を記載する
- 第二表 各種控除などの内容を記載する
- 第三表 土地建物や株式等を売却した場合など分離課税の申告がある場合
- 第四表 純損失の繰越がある場合(2枚に分かれています)
この中で、個人事業主が使用するのは「第一表の確定申告書B」と「第二表」の2つです。必要に応じて第三表から第四表を追加して使用します。
なお、2023年1月をもって、確定申告書Aは廃止となり、申告書Bと統合されて2022年分から「申告書」になりました。同時に修正申告で使用する第五表も廃止になりました。2022年分の修正申告では第一表と第二表を使用します。
収支内訳書
収支内訳書は、2ページで構成されています。また、営む事業などに応じて一般用、農業所得用、不動産所得用の3種類の様式があります。なお、2022年分の申告から、業務に係る雑所得のある人で一定の条件に当てはまる場合に、収支内訳書の提出が必要です。その場合は、一般用を使用します。
1ページ目は、その年1年間の収入金額や必要経費を項目ごとに集計して記入し、事業所得などの金額を計算する部分と、従業員や専従者へ支払った給与の内訳を記入する部分などがあります。
事業所得のある人が、その事業に係る収支内訳書を作成する場合には「営業等」に〇印を付けます。業務に係る雑所得のある方がその業務に係る収支内訳書を作成する場合には「雑(業務)」に〇印を付けます。
2ページ目は、減価償却費の計算明細や、取引先ごとの売上・仕入金額、地代家賃の支払先などを記入する部分などがあります。
白色申告の流れ
白色申告の流れについて説明していきます。
記帳する
日々の取引を、項目別に年月日、相手先、金額がわかるように帳簿へ記入、つまり「記帳」をしていきます。白色申告の場合は、請求書や領収書などで内訳がわかるようにしておけば1日の合計金額でまとめて記入する簡易な方法による記載が認められています。
決算
1年間の収入金額や必要経費の集計をして、所得金額を確定することを「決算」と言います。決算では、日々の取引の集計のほか、減価償却費の計算や商品の棚卸金額を反映させるなどの処理を行います。白色申告の場合は、収支内訳書に決算内容をまとめて記入します。
必要書類を入手する
確定申告に必要な確定申告書や収支内訳書は、国税庁のホームページからダウンロードすることができます。もちろん、税務署で用紙を受け取ることも可能です。
収支内訳書の入手方法
収支内訳書は確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)からダウンロードできます。該当するのは「国税庁 収支内訳書(一般用)【令和4年分以降用】」です。
確定申告書の入手方法
確定申告書も収支内訳書と同じく確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)からダウンロードできます。該当するのは「申告書第一表・第二表【令和4年分以降用】」です。
書類を記入する
確定申告書等の書類を入手したら、それぞれ記入していきます。流れとしては、まず収支内訳書を作成して、それを基に確定申告書を作成します。
収支内訳書

白色申告を行う際に、確定申告書とともに提出する「収支内訳書」。青色申告で作成する青色申告決算書とは異なり、手間をかけずに作成することができます。
内容としては、 1年間の収入、原価、人件費、家賃等やその他の費用を記載して、その年の事業に対しての所得金額(利益)を計算し、用紙に記入していきます。収支内訳書は表と裏の2枚での構成になっており、一般用、不動産所得用、農業所得用に用紙の種類が分かれています。該当するものに記入していきましょう。
書き方に関しては、詳しくは白色申告の収支内訳書(一般用)の書き方をご覧ください。
確定申告書

所得税の確定申告書は、青色申告でも同じく提出をするもので、確定申告書の用紙を用います。確定申告書の書き方に関しては、詳しくは次の関連記事をご覧ください。
- 【関連記事】
- 確定申告の必要書類とは?
申告をする
確定申告書一式の準備ができたら、申告期限までに確定申告書を提出します。
書面で提出する場合には、毎回本人確認書類の提示又は写しの添付が必要です。本人確認書類は、マイナンバーカードをお持ちでしたらその表面、裏面で済みます。なお、税制改正により令和3年(2021年)分より確定申告書などへの押印は廃止されました。
e-Taxで提出する場合には、マイナンバーカード方式、ID・パスワード方式の別で手順が異なりますが、まずはe-Taxのための確定申告書データを作成することが必要です。
国税庁の確定申告書等作成コーナーで作成することができるほか、やよいの白色申告 オンラインなどのe-Tax対応の会計ソフトであれば、会計データから連動してe-Taxデータの作成から送信までを行うことが可能です。
納税する、還付金を受け取る
所得税の確定申告書の提出をしたら、納税額がある場合は納付期限までに納付します。納付は納付書に記入して金融機関や税務署で納めることができるほか、e-Taxでの提出後はネットバンキングで納めることも可能です。
あらかじめ届出をしておけば、一定日に引き落とされる振替納税を利用できたり、e-Taxで引き落とし日を指定するダイレクト納付が利用できたりします。このほか、クレジットカードでの納付やコンビニ納付など、さまざまな納付方法が用意されています。
確定申告により還付税額がある場合は、提出後に税務署で還付手続きが行われ、問題なければ1か月ほどで指定の口座へ還付金が振り込まれます。e-Taxで提出する場合は、3週間ほどに早まります。
- 【参考記事】
- [手続名]国税の納付手続(納期限・振替日・納付方法)
- 【関連記事】
- 「確定申告の還付金は “ボーナス”なんて言うけど……」マンガでわかるスモールビジネス用語
- 確定申告の還付金、いつもらえる?いくら振り込まれる?計算方法やスケジュールを知りたい
- 確定申告で還付金を受け取る方法
- 振替納税とは?手続きの方法や注意点などポイントを解説!

白色申告から青色申告へ
白色申告の流れは先ほど説明したとおりですが、青色申告でも流れそのものは変わりありません。それでは、白色申告に比べて青色申告の何がいいのか、青色申告をするにはどのように手続きしたらよいのかを説明します。
青色申告って何がいいの?
青色申告にはさまざまな税制上の特典が用意されているということは先述のとおりです。しかし、青色申告をする、つまりしっかりと帳簿付けをすることは、税務上のメリットにとどまりません。しっかりと帳簿付けをすることで、例えば次のようなメリットが挙げられます。
- 帳簿付けにより日々お金の流れをチェックすることになるため、資金繰りの状況を把握しやすくなる
- 帳簿付けにより試算表を作成できるため、経営状況を把握しやすくなる
- 複式簿記での帳簿付けで貸借対照表まで作成していると、数字の信頼性が上がるので借入をするときなどの可能性が広がる
最近ではコロナ禍での支援金や給付金について、月ごとの売上などが青色申告決算書に記載されていることから申請手続がスムーズに行えたなどのメリットもありました。
青色申告をしたほうがいい人
では、「どのような場合に青色申告をしたほうがよいのか?」ということですが、基本的にこれまで説明した税制上のメリットを受けられる方は、青色申告にしたほうがよいです。
また、起業するタイミングで青色申告にすることがおすすめです。初年度は設備投資も多いため、30万円未満の少額減価償却資産の特例も受けられる可能性があります。また、初年度が赤字になった場合には純損失の繰越し控除が受けられます。
青色申告に変更するタイミング
どんな個人事業主でも、白色申告よりも青色申告にすることがおすすめですが、あえて切り替えのタイミングを悩んでいるなら、所得が増えてきたタイミングで青色申告に変更することがおすすめです。
所得税は所得が上がるにつれて税率も上がっていく累進課税という方式になっています。しっかりと帳簿付けを行うことで受けられる青色申告特別控除は、控除された金額の分だけ所得を下げてくれます。つまり、税率の高い部分から控除されるため、所得が多い人ほどより節税効果が上がります。
また、家族が事業を手伝っている場合には、届出することにより青色事業専従者給与が認められますので、所得を分散することも可能です。
青色申告に変更する手順
確定申告を青色申告にしようとする場合には、その年3月15日までに所得税の青色申告承認申請書を税務署に提出する必要があります。例えば、令和4年分(令和5年申告)の所得税から青色申告にする場合は、令和4年3月15日までに提出しなければなりません。つまり、現在白色申告をしている方は、3月15日を過ぎてしまうとその年の分については青色申告にすることができません。
また、開業した年については、開業の日が1月16日以後の場合は開業の日から2か月以内が提出期限となります。

- 【関連記事】
- 青色申告のやり方完全ガイド
- 青色申告のメリットと節税効果についてのまとめ
- 白色申告者必見!青色申告で得られる”おトク”を教えます
- 青色・白色の都市伝説は本当か? アンケートで分かった確定申告の誤解!
- 個人事業主が実際に「白色申告→青色申告」に変更して感じたこと
- 開業届の基礎知識【書き方や提出先、費用や期限はいつまで?】
白色申告は簡単な帳簿付けで申告可能。慣れたら青色申告も検討しよう
白色申告は簡単な帳簿付けで済むため、簿記が苦手という方や、青色申告のメリットを受けるほどの所得がないという方には最適な方法です。
しかし、事業の拡大を考えると、今のうちから青色申告へシフトする準備をしておき、いざというときに税制上のメリットを受けられるようにしておくのもひとつの手です。
※記事内にある各書式は、2021年10月現在税務署などで配布しているものです。変更になる場合があります。
photo:宮原裕一/Getty Images
よくある質問
Q 白色申告(しろいろしんこく)とは?
A 個人事業主だけでなく、会社員や年金生活者など全ての納税者が対象となる基本的な確定申告の方法のこと。シンプルな帳簿付けで申告を済ませることできるのが特徴です。詳しくはこちら
Q 白色申告のメリットとは?
A 白色申告のメリットは、特に申請も必要なく、記帳も申告手続きも簡単です。確定申告に苦手意識を持つ人にとっては最適の申告方法だといえるでしょう。詳しくはこちら
Q 白色申告のデメリットはあるの?
A 青色申告で受けられるさまざまな税制上のメリットを、白色申告では受けることができません。詳しくはこちら